『僕達の愛する子供へ』 そうやって最後に唱えた。 ジェームズ達のいたずらの集大成、『忍びの地図』 それがやっと完成したところだった。 「はぁ、やっと出来たーッ!!」 叫ぶ青年はシリウス。 「僕もう疲れちゃったよ…」 弱音を吐いて、その辺りに座り込むピーター。 「チョコレートだったらあるけど」 笑顔で差し出すリーマス。 「お前いっつも持ってるよなぁ…」 飽きれて、でも楽しそうに笑うジェームズ。 永遠の友情だなんてクサイ言葉を信じてるわけじゃないけど、 今確かに自分たちは親友だったと何か形に残しておきたくて、コレを作った。 これがある間は、自分達の友情はココにある。 それを信じたかった。 「…どーせだったら、自分達の子供に使って欲しいよなぁ…」 リーマスのチョコを食べながら、ぼそりとジェームズが呟いた。 「お前、そんなの使う子供に育てるのか?リリーが怒るぞ」 「何を言うんだいパッドフッド。 こんな楽しい所を探検しないで卒業したら、リーマスからチョコを取るようなものだ!!」 それを聞いて、少しむっとして言う。 「僕は別にチョコばっかり食べてるわけじゃないよ。 キャラメルポップコーンとか、苺のタルトケーキとか。たくさん」 次々と出される甘いお菓子の名前を聞いて、シリウスはうっ、と唸った。 「やめてくれよ。聞くだけで胸焼けがする」 「お前もそんな年になったか…」 「うるさい!!…で、さっきの話だが」 急に話が脱線したので、無理矢理元に戻すと、またジェームズは話しはじめた。 「うん、でも本当に、こういう事って大事だと思うんだ。 …やっぱり子供は男の子がいいかなぁ…」 「ジェームズの息子だからな、どんな奴に育つか…」 「でもリリーの息子だもん。顔はかわいいと思うよ」 好き勝手な事を言う二人をジトリと見る。 「だけどシリウスは絶対!!親バカになりそうだなぁ」 「そうだな。コレはもう絶対だな」 「何だよソレ…違うって」 あながち外れてもいない推論に、口をとがらせて反論する。 そういえば、とジェームズはリーマスに向いた。 「お前はどうするんだ?卒業したら」 こういう時に下手な遠慮をしないのが彼らのよい所で、 そういう普通の質問をふいと投げかけてきてくれるのがリーマスは好きだった。 「そうだなぁ…」 少し悲しい顔になって、言う。 「出来れば人狼を治したい。 せめて無害になりたい。将来もしかして出来るかもしれないだろ?そんな薬。 そうしたら…そうだなぁ、先生になりたい。ダンブルドアのような」 ふぅん、と皆頷いた。 ダンブルドアを尊敬する気持ちは皆あるのだ。 「そして、先生になったら生徒のために出来るだけの事をするよ。 償い…っていうのかな。アハハ」 寂しそうに笑ったリーマスの肩を、ジェームズはぽんと叩いた。 「そしたら俺の息子もよろしくな」 「分かった。精一杯厳しく可愛がってあげるよv」 にっこりといつもの笑みを返すリーマスを、冗談じゃない、という眼差しで見つめた。 「結婚は?しないのか?」 今度はシリウスが少し痛いものを見るように尋ねてくる。 こんな時に、『辛い』と顔に出てしまうのは彼の特徴だ。 「しないってか出来ないよ」 「いいさ。シリウスがお嫁にもらってくれる」 「何で俺なんだよ…?男二人生きていく気はねぇっての」 「僕もだよ」 ジェームズのからかいに対応するタイミングはピッタリで、 やっぱりいいコンビだなぁと心の中で苦笑する。 「厳しく可愛がるならやっぱりセブルスの子供だろ!!」 楽しくてしょうがない、という表情にくるりと変えて、シリウスは同意を求めた。 「確かに。父親そっくりの頑固っぽい顔して、 『先生、我輩はどうしてもこの点数に納得できないのだが』とか言うんだッ!!」 「ギャハハハハ!!それいい!!ジェームズ最高!!」 「分からないよ、案外先生とかやってたりして」 「お前あいつと同じ職場で働くのか?…それは嫌だけど楽しそうだなぁ…」 「というか似合わねーよ!!それこそ爆笑だ!!」 笑いが絶えないシリウスを、どうどうとリーマスが落ち着かせる。 「まあとにかく」 パン、と手を叩いてジェームズが締める。 「この地図は後世に語り継がれ、受け継がれていくのだろう!!プロングス!!」 それを受けてシリウスが立ち上がる。 「我らは願う!!この地図を持つもののいたずらの成功を!!パッドフッド!!」 「そして我らと後世の者の幸福を!!ムーニー!!」 そこまで言った後、続く言葉がない事に気付いた。 「ピーター?」 振り返った彼らの目には、すっかり眠りこける小さなピーターが写った。 「マグゴナガル先生の課題で疲れているんだ。寝かせておこうぜ」 にひ、と笑ってシリウスが言った。 きっとこのまま置いていくとかいう事を企んでいるのだろう。 三人でそっと向き合って、声をそろえて言った。 『僕達の愛する子供へ!!』 二度と戻らない、ある夜の会話だった。 親世代〜〜ッッ!!!ラブです!!というかついにやっちまいました小説もどき(笑) 落書きで時々書いていた会話を全部盛り込もうとしたら、無理でした。 そしてハリーに受け継がれていくんだよね…(泣) 親世代、すっごい切ないです。 いつかちゃんと書きたいです…。 |